イタリア旅行記3日目

ローマ→フィレンツェ(8)

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(花の聖母マリア大聖堂)

サン・ジョヴァンニ洗礼堂を出てわたしたちはいよいよ大聖堂に足を踏み入れた。教会・聖堂は入場無料・年中無休である。
「昨日のサン・ピエトロ大聖堂ほどではないが、ここも大きいなあ」
「15世紀の建築当時は世界最大の建造物だったらしいニャ」
サン・ピエトロ大聖堂と同様に、建物の中を歩いているのを忘れてしまうほどその内部空間は巨大である。クーポラの内部にはヴァザーリによるフレスコ画「最後の審判」が描かれている。この絵も10年以上にわたった修復が行われたあとである。

フレスコ画を見上げていたみけがつぶやいた。「わが輩は画家としてのヴァザーリは買っていない」
「わはははは、言っちゃった。ミケランジェロを礼賛・崇拝したヴァザーリが聞いたら泣くぞ」
「建築家としての才能、『芸術家列伝』をまとめた業績は認めるがにゃ」
「このクーポラにも登ることが出来るらしい。ただし階段。どうする?」
「今じゃにゃくてもいいだろう。なあ、それよりもわが輩は、早く見に行きたいものがあるんだけどにゃあ…」みけがわたしの足にすり寄ってきた。
「気持ち悪いなあ。分かっているよ、『メディチ家礼拝堂』だろう? じゃあミケランジェロを見に行くか!」

サン・ロレンツォ聖堂へ

大聖堂の広場から歩いて数分の所にサン・ロレンツォ聖堂はある。メディチ家ゆかりの教会、図書館、礼拝堂が一体となった建築だ。この教会の前も広場になっており、土産物を売る露店がいくつも立っている。サン・ロレンツォ教会の正面はずいぶん貧弱である。積み上げたレンガがむき出しであり、そこに穴を開けたように入口が開いているのだ。
「ほかの教会のファサードは綺麗に装飾がされているのに、ここのは汚いよなあ」
「実はこの教会のファサードをミケランジェロが作ることになっていたのだが、結局完成しなかったのニャ。やつの構想したスケッチは残っているんだけどニャ」

ミケランジェロの設計した階段があるラウレンツィアーナ図書館へは教会の脇から入る。中庭を囲うように回廊があり、サン・マルコ修道院と似たような作りである。わたしたちが図書館の入口にさしかかると、中から男が二人出てきて鍵を閉めてしまった。男のひとりが、わたしの方を見て腕でバッテンを作って言った。「クローズド」
「えっ? 閉まったの?」時計を見るとちょうど午後1時だ。急いでガイドブックを紐解くと、図書館の開館時間は午前9時から午後1時までとなっている。
「あらららら、間に合わなかったよ。どうしてこう、閉まるのが早いのかなあ」
「なにをやっておるのニャ〜〜!! 楽しみにしていたのにィ!」みけが牙をむき出しにしてわたしにネコパンチをしてきた。
「いててててててて。まあまあ、また明日来ようじゃないか」
「そうか、まだ明日があるんだったニャ。じゃあメディチ家礼拝堂に行こう」

しかし可哀想にわたしとみけは、翌日思いも寄らぬヘマをやらかしラウレンツィアーナ図書館を訪れることが出来なくなるのであるが、その話は「旅行記4日目」で語られることになる。

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