イタリア旅行記3日目

ローマ→フィレンツェ(2)

タクシーで宿泊ホテルへ

フィレンツェで泊まるホテルは「ビバホテル・アレクサンダー」だ。駅を出た所にあるタクシー乗り場からタクシーに乗る。ホテルの住所と名前を書いた紙を運転手に見せて、英語で「ここへ行きたい」と言と、太った色黒の善良そうな運転手は「オウ、アレクサンダー!」了解したようである。車を出しながら「アレクサンダ〜♪」と、勝手なメロディーをつけて歌っている。

車はフィレンツェ中央駅からかなり郊外まで出てきた。フィレンツェの中心地から離れるほど、景色は近代的になってくる。集合住宅も建ち並び、車の通りも多い。パネルに貼ったポスターによる屋外広告はローマと同じである。「AKAGI」というタイトルの映画のポスターをそこら中で見かけたが、これはロバート・デ・ニーロの「RONIN」のことだったようだ。

ホテルの前に到着。運転手に料金を支払い、お釣りの中から1000リラ紙幣をチップとして渡しながら「グラッツェ、アリベデルチ!(ありがとう、さようならの意)」と告げると、彼は低音の美声で一言「チャオゥ!」。どうもイタリアのタクシーの運転手は「チャオ」という挨拶を好んで使うようだ。親しい間柄の挨拶だと理解していたので使わないでいたのであるが、実際はそんなに堅苦しく考えることもないらしい。もっと積極的に使ってみようと思う。

ホテルに入る。ローマで宿泊したホテルほど立派ではない。フロントの女性に名乗ると、すぐチェックインの用紙を渡され、サインする。女性はイタリア語でベラベラと注意事項か何かを早口で話し始めた。こちらが面食らっていると、「OK?」と聞いてきたので、とりあえず「ヤー」などと適当にうなずきながら返事をしてみた。

部屋の鍵を受け取る。「レストランはどこですか?」英語で訪ねると、ロビーの脇にある下り階段を指して何かを言っている。階下にあるらしいな、と思っていると、フロントの女性は
「リストランテハ、下ニィ、アリマス」と日本語で言うではないか。
エレベーターで部屋に向かう。部屋番号は205。イタリアの階数の数え方は「0階」から始まるので、2階とは、日本で言うところの3階のことなのだ。

部屋に入るとツインルームである。
「わあ、ツインだ。どっちで寝ようかなあ」
「わが輩はこっちにゃ!」みけに窓側のベッドを取られてしまった。
部屋にはフィレンツェ全景の絵が掛けられている。格子戸のついた窓はおもての通りに面していて、車が通るのを見下ろすことが出来る。
さあ出かける準備だ。トイレで用を足していると、電話がなった。
ひゃあ、言葉が通じない相手と、どうやって電話でコミュニケーションをとろうか。そういえばフロントでパスポートを提示していないので、おそらくそのことであろう。腹をくくって電話を取った。
「プロント」イタリア語で「もしもし」の意である。しまった、また分かりもしないイタリア語を使ってしまった。イタリア語で尋ねるとイタリア語で返ってきてしまうので、なるべく使わないようにしているのだ。電話の向こうで、おそらくは先ほどのフロントの女性が、イタリア語でなにかまくし立てている。話の中に「パッサポルト(パスポートの意)」という言葉を聞き取ったので、やはりパスポートを持ってきてくれといいたいのであろう。わたしは「パスポート、オーケー、オーケー」などと言って受話器を置いた。

タクシーには「チャオ!」

ロビーへ降りていき、フロントにパスポートを出すと、書類に旅券番号などを書き写し始めた。やはりパスポートを持って来いという電話だったのだ。部屋の鍵を預けて、タクシーを呼んでもらう。

最初の目的地はアカデミア美術館。ミケランジェロのあまりにも有名な彫刻「ダビデ像」がある。ホテル前についたタクシーに乗り込み、運転手に「〈アカデミア美術館〉へ行きたい」と、〈アカデミア美術館〉の部分のみイタリア語、ほかの部分を英語で告げると、運転手は「アカデミア!」と復唱して車を出した。タクシーは駅からホテルまで通ってきた道を引き返すルートをたどる。外を見ると、ぱらぱらと雨が降り出していた。運転手は鼻歌を歌いながらの運転で、実に機嫌が良さそうだ。街の中心部に入ると、窓を開けてほかのタクシーの運転手と大声で話したりしている。

「この道をまっすぐ行くとアカデミア美術館だ」おそらく運転手はそう言ったのであろう。車を狭い路地の入り口に止めた。料金を支払い、わたしは「チャオ!」と言いながらタクシーを降りた。わたしの挨拶に運転手も嬉しそうに「チャオ!」と答えた。

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