イタリア旅行記3日目

ローマ→フィレンツェ(1)

鉄道でフィレンツェへ

6:00 目覚まし時計で目覚める。イタリアで迎える2度目の朝。朝食は昨日と同じ、ホテルのコンチネンタルブレックファストである。甘い菓子パンとフルーツをほおばり、コーヒーで流し込む。みけは横で生ハムを食べている。テーブルには白いクロスが掛けられているので、汚さないように気をつかうのだが、空席の後片付けをしているウェイトレスを観察していると、テーブルのパンくずを床に払い落としているではないか。いいかげんなものである。

部屋に戻りチェックアウトの準備をする。1,000リラ紙幣のチップを枕元に置く。3泊分の荷物をボストンバックにまとめて、必要のないものはスーツケースに入れる。今後の予定は、フィレンツェ2泊に、ベネツィアに1泊したあと再びローマのこのホテルに戻ってくるので、巨大なスーツケースはホテルに預かってもらうのだ。ロビーへ降りていってチェックアウト。スーツケースの事を頼み、タクシーを呼んでもらう。ホテルのしばしタクシーの到着を待つ。ローマ・テルミニ駅へ向かう。

駅に着くとさすがに人でごったがえしている。ホームにならぶ見慣れないデザインの列車。「世界の車窓から」のようだ。駅には日本のような改札は無く、入り口からホームまで一つのフロアーとでもいおうか、誰でも出入りが自由になっている。乗車する場合は切符を刻印機に差し込み、日付を刻印しなければならない。わたしたちは切符に刻印したあと、乗り込む列車・車両を探して乗り込んだ。座席はオープンタイプではなく、コンパートメントになっている。切符と照らし合わせて自分の指定席を探しだすと、おなじコンパートメントに、50代ぐらいの尼さんがすでに座っていた。

「ボンジョルノ」わたしが挨拶をすると、尼さんも「ボンジョルノ」と静かに答えた。6人掛けのコンパートメントで、尼さんは通路側、わたしの席は尼さんと同じ列の、座席ひとつ隔てた窓側である。わたしのあとから入ってきたみけに尼さんは目を細めて、「ボンジョルノ」と挨拶をしたが、みけは見向きもしない。無愛想であるが、わたしはこいつのこういった人に媚びないところが気に入っている。

「フィレンツェまでは2時間かかるんだろ。わが輩はすこし寝てもいいかにゃ?」みけは大きなあくびをすると、わたしの向かい側の日当たりのいい席に飛び乗り、背をまるめて寝始めてしまった。

わたしとみけをのせた列車は8:10、ローマを出発した。

イタリアの車窓から

6人掛けのコンパートメントであるが、4席は空席のままである。そのうちのひとつでみけはすでに寝息を立て始めている。フィレンツェ到着は10:20の予定。

車窓から見える外国の眺めに飽きることはないが、わたしはガイドブックを開いて、フィレンツェで観光すべきものを復習しはじめた。ルネサンスの街、花の都フィレンツェは、イタリア・ルネサンスマニアのわたしにとっては夢のような場所だ。実際にわたしはフィレンツェの風景を何度か夢の中で見ている。『夢にまで見たフィレンツェ』なのだ。

向かいの座席で寝ているみけは今フィレンツェについた夢を見ているのだろうか。自分がミケランジェロの生まれ変わりであると信じているみけも、フィレンツェに対する思い入れは相当なものであろう。横をみると、先ほどまで本に目を落としていたシスターも居眠りをしている。

フィレンツェ到着

「Firenze S.M.E」という駅名を示す看板が見えた。ああ、わたしはフィレンツェに来たのだ。10:20、列車はフィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅、別名フィレンツェ中央駅に到着。
「みけ、起きろ。フィレンツェに着いたぞ!」
起き抜けのまどろみの中、状況が把握できていないのか、みけは目をしばたいている。
「おお、着いたのかっ」みけは座席から飛び降りると、降車の用意をしているシスターの足下をすり抜けて先に列車を降りてしまった。わたしもとシスターと別れの挨拶を交わし、列車を降りた。みけはホームできょろきょろとまわりを見回している。
「ついにフィレンツェに来たな、みけ」
「うむ。でもなんだかまだ実感がわかないにゃあ」
わたしも同感だった。駅の中からではフィレンツェの景色を感じることはできない。
「さあ、行こうげんげん! まずはウフィツィ美術館か?! アカデミア美術館か?!」
「焦るな、みけ。ウフィツィ美術館へ行くのは明日の朝にしよう。あそこは行列ができるからな。ガイドブックによると駅で入場整理券をもらえるらしいから、今もらっていこう」

わたしとみけは駅構内のインフォメーションに立ち寄った。しかしどこかのおじさんが受付で話し込んでいて全然順番が回ってこないのである。整理券はあきらめてまずはホテルへ行きチェックインを済ませてしまう事にした。

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